心理セラピーの個人セッションでは、「小さなトラウマ」を解放するということをお話してきましたが、

では、その「小さなトラウマ」は、
日常生活でどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

鎖につながれたゾウ

これからご紹介するのは、
「鎖につながれたゾウ」というお話です。

巨体で力持ちのサーカスの象が、なぜ小さな杭の鎖につながれているだけで逃げないのか。

「自分」というものの捉え方について、
考えさせられるお話です。

▼私は子供の頃サーカスが大好きで、中でも動物ショーがいちばんの楽しみだった。

特に象がお気に入りだったんだけど、実は私だけではなく他の子供にとってもいちばん人気だったようだ。

▼その大きな動物は舞台に上がると、持ち前のすさまじい体重や図体、怪カをみごとに披露していた。

しかし演技が終わって次の出番を待つあいだ、象はいつも地面のちっぽけな杭に足を鎖でつながれていた。

▼ところがその杭というのは、地面にいくらも打ち込まれていないような小さな木のかけらなのだ。

確かに鎖は太く頑丈そうだったが、木を根こそぎ一本引き抜くほどのカを持った動物なら、杭をひっこ抜いて逃げることなど簡単そうなのに……。

▼その疑問は誰もが抱くものだろうと思う。一体何が象を捕まえているんだろう?どうして逃げないんだろう?

▼五、六歳だった私は、大人は何でも知っているとまだ信じていた。だから象の謎について先生や父親、周りの大人たちに聞いてみた。

象は飼い馴らされているから逃げないんだよ、と答えた人もいた。

▼そういうとき、私は当然次のように質問を返した。

「飼い馴らされているんだったら、どうして鎖につながれているの?」

しかし、つじつまの合う答えが返ってきた覚えはない。時とともに象と杭の謎については忘れ、同じ思い出を持った人に出合ったときに思い出すくらいだった。

▼数年前、たまたま、その疑問に答えられる本当に賢い人に出合った。

その答えはこうだ。

「サーカスの象が逃げないのは、とっても小さいときから同じような杭につながれているからだ」

▼僕は目を閉じて、生まれたばかりのか弱い象が杭につながれているところを思い浮かべた。

そのとき象は、押したり、引いたり、汗だくになって逃げようとしたに違いない。でも努カの甲斐なく逃げることはできなかった。

小さな象にとって、杭はあまりに大きすぎたのだ。疲れきって眠ったことだろう。次の日もまた逃げようと頑張って、次の日も、そのまた次の日も……。

▼ついにある日、その象の一生においていちばん恐ろしいことになるその日、象は自分の無力さを認めて、運命に身を委ねたのだ。

サーカスで見る大きく力強い象は、かわいそうに”できない”と信じ込んでいるから逃げないのだ。

▼生まれて間もないときに無力だと感じた、その記憶が頭にこびりついている。

そして最悪なのは、二度とその記憶について真剣に考えなおさなかったことだ。

二度と、二度と、自分の力を試そうとはしなかったのだ。

つながれた鎖が外せなくても

つながれた鎖が外せないこのゾウを、あなたはかわいそうだと思ったかもしれません。

このお話のゾウは、
大きくて力強いはずなのに、自分で鎖を外すことができませんでした。

それほどまでに過去の記憶は、
今の自分自身に強い影響を及ぼしているのです。

けれども、過去の自分を受け入れられたとき、つながれた鎖は自由になります。

つながれた鎖をほどいてあげられるのはあなたを除いて他にいないのです。

 

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